第2回 サクラミノウミウシ

 サクラミノウミウシ 無脊椎動物
   「軟体動物門腹足綱」に属するグループ
   貝殻が退化したり、全く無くなった巻貝の仲間。
   ピンクの花のような固体がウミウシ本体、白い毛糸の塊の
   ようなものは卵。英語では海のナメクジ(Sea Slug)と
   呼ばれている。


生命の形は自由、生きるための工夫も自由 

 「あいつは骨のない奴だ」と、人から言われたらやはりかなり落ち込む。人生において、自分でもそう思うようなときもなくはない。

「背筋を伸ばして颯爽と生きる」、それは人間としての理想ではある。カッコいい。しかし年をとれば否応なしに背中が曲がってきたりする。骨粗しょう症などになれば、本当に骨がなくなる。それは精神とは全く関係のないことだけれど、やはりちょっと気が弱くなる。

そんなときは水族館にいって、無脊椎動物の水槽を眺める。実は水族館には背骨のない生物というのがたくさんいる。タコやイカを始め、クラゲ、イソギンチャク、ナマコやウミウシなど見るからに背骨がないようなものから、貝類、サンゴ、ウニ、ヒトデなど背骨は確かにないけれど骨だらけのようなものまで、背筋をちゃんと伸ばすことのむずかしい生物がたくさんいるのである。

しかし、骨のない生物が水に漂っている姿は、自由で優雅で骨なんか何するものぞという感じである。クラゲやイソギンチャクの神秘的な美しさは癒し系としてすでにポピュラーであるが、ナメクジみたいで気持ち悪いと嫌われるウミウシでも、美しい色彩と花びらのような体を持った種類がたくさんいて、幻想的でさえある。

ウミウシは自分を守る殻を失ってしまったが、有毒な生物を食べることで自分の体内に毒を蓄積して敵に食べられないようにしている。自分が死ぬときは相手も道連れという怖い奴なのである。中には「刺胞」と呼ばれる、毒を注入する針を備えたイソギンチャクやサンゴの仲間の刺胞動物を餌として食べ、その毒の刺胞を鰓に充填して自分の武器として二次使用する、「盗刺胞」という技術をもつものがある。何という才覚。 

もともと自分には備わってない機能をウミウシはどうやって身に付けたのか。

それはやっぱり体験だろう。多分、ウミウシはあるとき間違えて毒針を食べてしまい、あわてて吐き出したところが獲物に当たって相手はしびれてしまった。これはうまい捕獲方法だ。ウミウシはきっとそう思ったに違いない。そういう体験が生き方にまでなったのである。体験が経験となり思想になったのである。

というのは全く私の非科学的考察であるが、さすが海は生命の原点であり、示唆に富んでいる。偶然を巧みに利用して飛躍する、これこそ人生の極意なり。



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 第1回 カクレクマノミ一家

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