第1回 カクレクマノミの一家


  カクレクマノミ「スズメダイ科」
   熱帯のサンゴ礁の魚
   ディズニー・アニメ、『ファインディング・ニモ』の
   主人公になったため、却って乱獲にあったのは悲しい。
  


湘南の海岸、ここが地球への扉、出会いの海


駅から海岸までの道は狭い通りで、両側の建物が視界をさえぎってすぐ近くのはずの海は見えない。昔ながらのお土産やさんの店先に並ぶ貝殻細工や、おきまりの魚の干物、夏の思い出のビーチボールなどに目をとられながら足を速める。
なぜか駅から海水浴場までの通りは昔からどこも同じようで、海に急いだ子どもの頃へ、一瞬、時を超える。

家並みが途切れ、急に目の前一面に海が広がった。海岸線にそって走る国道沿いに、その懐かしい水族館はあった。

入場券を買う窓口のある入り口は狭くて、小学生の団体が入るときは混雑してたいへんだが、ひとりでのんびり海の友だちに会いにくるにはちょうど良い、こじんまりとした水族館だ。

だが、この水族館には哲学がある。
「この水族館は多様な生物に命と魂を認め、ヒトが自然の中で生かされている、という考えの下に運営されています」
「ヒトを含んだすべての生命が、子孫を残すという将来へ向かっての明確な意志を持って、自由に生きている」ことを感じさせてくれるのだ。

今日出会ったのは、かわいいカクレクマノミの一家。クマノミの仲間はイソギンチャクと共生し、必ずオスとメスがペアで子育てをする。実は一家(同一集団)の中で、メス、オスになれるのはそれぞれ1匹ずつのみで、残りは中性という不思議な魚だ。
しかもメスはオスよりも一回り大きく、卵を産んだあとはナワバリを守って他の魚を追い払う女傑なのである。オスはイソギンチャクの根元の岩に産みつけられた卵の世話をする。ヒレで新鮮な水を送り、口を使ってゴミを取る。
もしもメスに事故があったときは、オスが大きく育ってメスになる。

カクレクマノミ一家にはこの他に育児見習いのNo.2がいて、そのNo.2が次にオスになるチャンスを待っているのだ。彼らは共に3年から5年ほど家族としての生活を送る。
家族制度というものも、生物によっていろいろとあるものなのである。彼らは彼らなりに工夫して懸命に自分たちの一家を守っているのだ。
つい、一家の小さな主に自分を重ねてみたりする。

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